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ひとひら第三話「初舞台」

「今 止めたくないのよ」




日曜になってやっと今週のアニメ視聴できました。

今回の「ひとひら」は原作の第5幕をオリジナル展開(オリナルではない)を交えたものでした。
初舞台当日の不安から逃げ出したくなる麦。しかし野乃先輩の声帯麻痺の事を知り、混乱のなか舞台本番を迎えてしまいました。その舞台袖で語られる野乃先輩の過去と友人との絆の深さ。その思いを受けて麦は、どうにか初舞台を乗り切る内容でした。
しかし、そんな麦主体のストーリー説明はまったく語る気がしません。

今回は野乃先輩と榊部長の対立とその原因がストーリーの中心だったので完全に野乃先輩が主役の話でした。少なくても私にはそうにしか見えません!(脳内補完込)

今回のポイントは「表情」「手」です。


<「無表情」と「見せない表情」と>

野乃先輩は「無表情」です。しかし決して感情がない訳ではないのです。
実際ポーカーフェイスからは読み取れない位に情熱的で強い意志の持ち主なのです。しかし同時にか弱い女子高生でもあります。
つまり演劇に対する情熱と、声帯麻痺に対する不安を併せ持っていて、それが表情からは読み取れない。
このギャップこそが野乃先輩の魅力です。

上記は私が勝手に名シーンと読んでいるものです。
「声帯麻痺の事実」と「榊部長のプレッシャー」、しかし同時に「演劇研究会代表としての責任」と麦の緊張を解そうとする「先輩としての優しさ」。
これらが入り混じった野乃先輩の心情が凝縮されたシーンだと言えます。


麦からみて表情的に野乃先輩の不安は感じられません。しかし安心させようと触れてきた手のひらが若干震えている様に「思えた」のです。この震えは自分の肩の震えなのか、野乃先輩の手の震えなのか、はたまた麦が感じただけなのか曖昧なのがポイントです。
第5幕で野乃先輩の不安が描かれるのはこのワンシーンだけで、この後は自分の過去の話をしながら、麦の緊張を解す「先輩」としてのストーリーです。
しかし、もし本当に震えていたとすると、この第5幕は麦に自分の過去を話す事で「野乃先輩自身の不安な気持ち」を振り払おうとしているのかもしれないのです。

つまり野乃先輩が麦から元気を貰っている構図にも読み取れるのです。物語が進むとよりはっきりと野乃先輩と麦の関係が明らかになってくるのですが、その事が最初に現れたのが、このワンシーンではないかと思います。

さてアニメではこの名シーンはどのように描かれるのか楽しみでしたが、ちょっと残念でした。
それは若干台詞が変更されていたのです。

麦「先輩の手が少し震えていた・・・」

震えていた事が確定した表現になっていました。アニメではコミックほど絵的に情感を表現する事ができない事から分かり易くするよう配慮したのだと思います。

一方で表情を見せない様に配慮している人もいます。榊部長です。

上図はオリナル(神奈さん)から演劇研究会の練習状況を聞いた榊部長のワンシーンです。
実際の表情は「安心」なのか「不満」なのかは興味が湧くところです。
もっともこういう表現は別に珍しいものではないと思います。


しかし野乃先輩の無表情に隠された「強さと弱さ」と対比する事で榊部長の「弱さ」みたいなものが感じられるシーンになると思います。
つまり演劇研究会と対立している構図の急先鋒でありながら、本当は誰よりも心配している事が読み取れるのではないかと思います。
ここもアニメでは展開上、榊部長の表情が死角にならない構図になってしまい残念でした。


<「手」は誰に差し伸べられているか>



榊部長から野乃先輩に差し伸べられた「手」。これによって演劇の世界に踏み込んだ野乃先輩は救われました。 しかし野乃先輩の声帯麻痺をきっかけに二人の絆に亀裂が走ってしまいました。ストーリーが進むとより詳しく描かれるので、今のところはこの表現に留めておきます。 そして救われた野乃先輩は今度は麦に対して、その「手」を差し伸べています。つまり野乃先輩は榊部長に今でも感謝しており、表面上の対立とは裏腹に二人の絆はしっかりと繋がっているのです。
麦の手を握ることで緊張を解そうとした野乃先輩。しかしそれは榊部長から教えてもらった方法です。つまり麦にかつての自分を重ね合わせているのです。そしてその事は、今の自分を榊部長と重ね合わせている事も意味します。 一方前項で述べた様に、実は野乃先輩は麦の緊張を解そうとする事で、同時に自分自身の不安な気持ちも払拭しようとしていたのかも知れません。そう考えると、この「手」は麦から野乃先輩に差し伸べられているともいえるのではないでしょうか? つまり野乃先輩は麦に手を差し伸べることで、榊部長との絆を無意識に再確認しているのだと思います。 野乃先輩と榊部長の手は今でもしっかりと繋がっているのです。 野乃先輩と榊部長の分かたれた「手」。この「手」はいつか再び繋がる日が来るのでしょうか?
ちなみに野乃先輩と麦が舞台袖で話をしている間、舞台では公演が続いていました(当然ですが)。このため野乃先輩の台詞が演目全体として非常に少ない事が分かり易く描かれていたと思います。動きや音があるアニメならではの表現方法だったと思います。