手塚治虫のキャラクタービジネスへの見果てぬ夢
アニメの制作費が安いのは手塚治虫のせい」というのは本当か・その2
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20070111/anime(「愛・蔵太の少し調べて書く日記」様)
この件に関しては、以前手塚治虫=アニメ制作費の低迷原因説を調べた時に読んだ「マンガ産業論」(筑摩書房)が非常に参考になりました。この本の内容は買って読んでいただくとして、それを踏まえて、自分の認識を大まかに記載しておきます。
①当時30分のアニメを制作できる体制を持っていたのは東映動画だけだった。つまり手塚治虫はアニメ業界では後発に当たるため、市場に切り込む何らかの武器が必要だった。
②鉄腕アトムを放映するまでの虫プロダクションは手塚治虫の原稿料で給料を払っていた。一刻も早い経済的独立が必要だった。
③手塚が提示した55万円という制作費は、コストとしては赤字だが1963年当時のTV番組制作費としては高いものだった。
④手塚はディズニーを意識していた。それは作品面だけではなく、マーチャンダイジング面でも同様だった。
⑤当時はコミック(マンガ本、ジャンプコミックなど)は普及しておらず、漫画=雑誌であり産業規模としてはまだ小さかった。出版以外とのマーチャンダイジングを行うのが当然の流れだった。
⑥初年度の版権収入は1億数千万円、平均視聴率は30%。つまりマーチャンダイジングは大成功した。
⑦後発の「鉄人28号」「狼少年ケン」はかなりスポンサー色が強い。(鉄人28号なんかはOPで「グリコ」とか連呼する)つまりアニメとマーチャンダイジングがTVアニメでは一体となる方式が主流となった。
⑧アニメで人気になった漫画を再編集する形でコミック(マンガ本)が誕生した。アニメによってコミック(マンガ本)市場が生まれ、出版メディアミックスの概念が生まれた。
<個人的な考え>
手塚治虫のアニメビジネスに対するビジョンは素晴らしものであり、TVアニメに参入した時も決して、ビジネス的な勝算が無い訳では無かったと思います。事実マーチャンダイジング手法やメディアミックスを生み出し大成功しました。
しかし、一経営者としては堅実性に欠けていた面の否定できないかと感じます。
しかしここで問題なのは、手塚のマーチャンダイジング手法を導入した後続TVアニメ群ではないかと思います。最悪でも手塚の原稿収入を期待する事ができる虫プロダクションと違い(最もそれでも無理でしょうが)、マーチャンダイジング面での失敗が即致命傷になる他のアニメ会社がTVアニメに参入した時、徐々に自転車操業に追い込まれて行き、スポンサーやTV局のいいなりになりながらジリ貧になっていった・・・。こんな想像は考えすぎでしょうか?
当時生まれてもいないので、これ以上の事は分かりません。
でも、第3次アニメブームまで主流だったスポンサータイアップアニメ方式が、元々は制作費の穴埋めという「後ろ向き」の発想ではなく「積極的なビジネス拡大」だったのではないかと思います。そう考えると手塚治虫を罪人扱いにしなくても良いのではないかと思います。
会社2度潰しているけれどもね!