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サムデイインザレイン

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1996年、エヴァ最終回で綾波レイが食パンを加えて「遅刻遅刻~」と叫ぶシーンが放映された。いわゆる「学園エヴァ」であり、それは視聴者が自分たちの欲望、それは後に「萌え」と名付けられたもの、をクリエイターに要求する「期待感」という圧力を否定する監督庵野秀明の、視聴者に対する最大限の侮蔑であったと思う。そしてエヴァはその後シンジがアスカの首を絞めるという、最後まで人と人とは分かり合えないという、全てを突き放した形で完結した。

それから10年経過した2006年、前人気ゼロから一気にブームとなる形で「涼宮ハルヒの憂鬱」は放映された。ライトノベル市場の拡大、ハルヒダンスの動画共有での拡散、話数シャッフルによる考察サイトブームという環境変化と一体となる要因から、現在のクールジャパンブームの基礎を築いたアニメ作品である。
しかし同時に綾波長門、アスカ=ハルヒというキャラの系譜からみる、萌えを侮蔑したエヴァ学園編への、オタク達の一つのルサンチマンだったのだとも思う。
自分たちの好きなキャラが、学園などの親近感のある舞台でラブコメを展開するという「萌えシチュエーション」を、きわめてエヴァ的なキャラクターで展開したのが「ハルヒ」であり、それが2006年ブームとなった。
エヴァ以降続いていた「セカイ系」「自分探し」「ディスコミュニケーション」というネガティブな空気は、ハルヒによって「ツンデレ」「キャラの使い分け」「ソーシャル」という様にポジティブな思考に変わっていった。時代が大きく変わったのだと思う。

そしてそのハルヒのスピンオフとして作られた「長門有希ちゃんの消失」が更に約10年(本当は9年・・・)経過してアニメ化しました。エヴァハルヒは否定されたものを肯定した10年でしたが、ハルヒ→有希ちゃんはファンの望む世界を描いた二次創作がオフィシャル化した10年だったと思います。この事はクリエイターからファンに影響力がシフトした事を意味すると思います。またコンテンツの受け入れ方が大きく変わった事も示していると思います。

「有希ちゃん」は「ハルヒ」の長門が望んだ世界を描いていると同時に、ファンが望んだ「萌えシチュエーション」を描いています。これは「視聴者の願望」と「キャラの望み」を同一視する「萌えのメタ構造」であり、「原作のスピンオフ」を「世界観の延長線上にある」と見なす「暗黙のパラレル」の現れでもあります。エヴァショックから約20年経過し、オタクはここまで進化したのかとビックリします。

2020年には東京オリンピックがあり、場合によっては史上初の萌えリンピックになる可能性もあります。今後更に多くの変化が起こるでしょうが、まずは注視していきたいと思います。